従来比、約2倍の電気を蓄える蓄電装置を開発。芝浦工業大学

芝浦工業大学は短時間で充電・放電が可能で、大容量の電気を蓄えることのできる蓄電装置の試作品に成功したというニュースです。

芝浦工業大学(東京都江東区/学長 村上雅人)電気工学科の松本聡教授は、株式会社MICC TEC(東京都新宿区/代表取締役 渋谷愛)と共同で、短時間での充放電が可能で大容量の電気を蓄えることのできる蓄電装置(キャパシタ)を開発する要素技術を確立しました。

グラフェンにリチウムを加えた新材料を電極に用いることで、従来の活性炭を使ったものより約2倍のエネルギーを蓄電できるものです。

太陽光や風力発電などの自然の力で発生したエネルギーも無駄なく利用できるほか、電気自動車のブレーキ時に失ってしまう運動エネルギーを蓄電装置に電気エネルギーとして効率的に回収し、モータの駆動エネルギーなどに充てることが期待できます。今後は小型・高性能なキャパシタとして実用化を目指します。

芝浦工業大学:プレスリリース2016.01.27

なぜ充電に「キャパシタ」なのか?

キャパシタとはコンデンサーのこと。

「充電」と聞くと「充電池」「バッテリー」を想像するところですが、キャパシタというシステムが電池よりも効率的に電気を充電・放電することができ、さらに電気の劣化が少ないという特徴から、芝浦工業大学は新しいキャパシタの開発を行なっています。

電池は化学反応を利用して蓄電するが,テレビやラジオに昔から使われているコンデンサは電気を電子のまま蓄える。それの非常に容量の大きなのが作られるようになった。その名は「電気二重層キャパシタ」,キャパシタとはコンデンサの別名である。

電気二重層キャパシタとは:キャパシタフォーラム

キャパシタの特長は、電気の「入り」が圧倒的に良いことです。電極材料の表面にしか電気が溜まらないので、回生によって得た電力を効率良く内部に蓄えられ、また放電時の効率も高いレベルにあります。電荷が表面にくっついているだけなので、電極材料の劣化もほとんどありません。

 電池の場合、電荷は電極材料の中にも潜り込ませる必要があります。ですから、蓄電する時には電極材料の内部に「押し込む」、放電時には「引っ張り出す」必要があって、電力の入りも出もキャパシタに劣ります。

 ハイブリッド車用の蓄電器として用いた場合、この特性の差が、クルマとしての“乗り味”の差を生みます。

キャパシタvsバッテリ −ハイブリッド車用蓄電器の本命は?−:TDK

現時点でキャパシタは容量が少ない。

しかし、

ハイブリッド車用の蓄電器として用いた場合、この特性の差が、クルマとしての“乗り味”の差を生みます。

というのはあくまで理論上の話で、ハイブリッドカーの蓄電システムには「バッテリー」が使用されているのが現状。

現実的にキャパシタは、まだまだ容量が少なく、長時間連続に電気を流したり、大容量の電気を蓄えるまでには至っていない様です。

さらにレーシングカーにキャバシタを使用していたトヨタもバッテリーを導入するというニュースも入ってきています。

昨年6月には、3.7リッターのV8自然吸気エンジンに代わる新たなガソリンエンジンの開発を明らかにしていることから、2012年以降使用してきたスーパーキャパシタに代わるハイブリッドエネルギー用の電池エネルギー貯蔵システムを導入するとみられている。

16年型トヨタTS050ハイブリッドが初走行、順調な走り出し/WEC:オートスポーツweb 2016年1月14日

新材料を使用し2倍の蓄電に成功。

電気工学科の松本聡教授は素材から見直し、炭素がハニカム構造からなるシート状の物質「グラフェン」に銀白色の金属「リチウム」を加えた新素材を装置の電極に採用。大容量の蓄電が可能になることを突き止めました。

この理論から新型キャパシタの試作。実験では従来のものより約2倍の蓄電に成功しています。

これにより、太陽光、風力発電などの需要と供給のバランスが取りにくい自然エネルギーを蓄えることが可能となるほか、電気自動車のバッテリーにキャパシタを追加することにより、ブレーキ操作時に失ってしまう大量の運動エネルギーをモータ稼働用の電気エネルギーに効率よく変換することができ、自動車の省エネ化・性能向上につながると期待されています。

今後、試作したキャパシタを「急速に充放電ができる、小型・高性能な大容量蓄電装置」として、再生可能エネルギーや電気自動車、電子機器などで実用化できるよう、使用シーンに合わせた電気特性の評価などを進めていきます。

芝浦工業大学:プレスリリース2016.01.27

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